むえに記録

書きたい気持ちに素直になろう

俺ガイル 12巻 感想と考察

 小説「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。12巻」のネタバレをします。

  ようやくKindleでも発売されました。

 

  前巻から二年以上経ってるんですね。

 ずいぶんと待った気がします。

 あの寒いテラスに心を置き去りにしたまま、同じ学生だったはずの自分もいつの間にか社会人になってました。時の流れ、怖えぇ~~。

 

 さくっと感想を書いていきます。まず表紙。

 雪ノ下さん、だいぶ人間らしい表情をしていますね。

 序盤の巻ではなんというか、アニメ的な少女っぽいデフォルメ感があるキャラだったような気がしますが、成長したんですね~。

  彼女の瞳の先にはきっと、終わりが見えているのでしょう。

 

 本編キャラクターの話。由比ヶ浜さんがこれまでも度々見せていた他者コントロールを思いっきりやっていて恐ろしいんですが、同時に切ないですね。

 八幡と青春を過ごすために状況を利用して、ついには自然に一緒の下校をするようになりました。もうヒロインレースでゴールテープ切りそうな感じ。順当に行けば、ね。

 しかし順当に行かないひねくれ者ばかりの俺ガイルでは不安しか無かったです。お別れの前に、最後の交流をしてる感じ。

 八幡も由比ヶ浜さんとの距離感が心地よさそうにしてたけど、それでも雪ノ下さんのことが気になってるのが見えて、おいおい八幡……由比ヶ浜さんを見てあげて~という気持ちでした。今回、由比ヶ浜にスポットが当たってるようで八幡は実際、由比ヶ浜さんを全然意識してないんですよね。いろはすにドキドキしてるシーンのほうが多くて、いい意味で由比ヶ浜さんに慣れているというか。友達の枠に収まってしまったように思えて切なくなります。ユイユイ大勝利へのどんでん返しは待っているのか!?

 そもそも主人公の八幡は『本物』などという意味不明なものを追い求めていますが、由比ヶ浜さんは本物なんて欲しくないと断言してしまっています。彼女のあり方は、俺ガイルが目指す物語の否定形で、彼女が勝つ未来は俺ガイルの根幹を破壊してしまうのです。

 『本物』の正体について。

 八幡の言う本物とはなんなのでしょうか。短絡的に言えば、偽物の生ぬるい関係性を破壊する真実の刃だと思います。奉仕部3人の関係性を春乃に問われ、「三角関係」と答えてめちゃくちゃバカにされてましたが、流石に八幡も実態が三角関係だとは考えてないでしょう。少なくとも、雪乃と八幡はお互いに恋愛感情では結ばれてない。それ以前の段階だと思います。

 八幡が雪乃を語るときは常に、彼女の高潔な「あり方」に触れています。八幡にとって彼女は「人間として」好ましい人であり、恋愛感情に持っていくことをタブーとしているフシすら読み取れます。

 対して雪乃が「彼」について語るときは(大抵由比ヶ浜と一緒のときですが)酷く子供っぽい感情を口にしています。戸惑いしかない。彼女の中でその感情は「恋愛」と定義されていないでしょう。

 『本物』が恋愛感情ではないのなら、何なのでしょうか。八幡が望んでいる『本物』の奉仕部とは何なのでしょうか。

 八幡は奉仕部のことを会社に例えることが多いです。いわく、自分は平社員だから決定権がない……などなど。前から違和感がありました。八幡は自分のあり方に責任を持って、ときに自分を捨ててまで恐ろしい選択をしてしまう人物です。なのにどうして、奉仕部に対して責任を持たないのでしょうか。奉仕部の他のメンバーがどうしたいか、顔色を伺って自分の出方を決めてしまうのでしょうか。

 その行動は、八幡が望む「信頼」の現れだと思います。奉仕部のメンバーを信頼したい。大事な人たちを信じたい。この「大事な人」というキーワードは12巻でも何度か登場します。以前の八幡なら絶対に言わなかったでしょう。こんな強くて、多用すれば偽物になってしまう言葉を口にするなんて。八幡の想いの一端が現れているように思えてなりません。奉仕部のみんなを信頼したくてたまらない。でも、雪乃と関わるたびに彼女の脆さに気づき、手を差し伸べたくなる。由比ヶ浜の「ズルさ」に甘えながらも、こんな自分は自分じゃないと叱責する「心」を抱えている八幡。こんな状況じゃ信頼できませんよね。自分のことすら信じられていないのに。

 八幡は今の奉仕部を変えたいのでしょう。卒業や、それに至るタイムリミットまでに彼は本当の信頼できる仲間を手にしたくてたまらない。誰でもいいわけではなく、戸塚でも材木座でもない、彼女達の本当を手にしたいと願っている。奉仕部の活動が無くなってから、彼はそう再確認したように思います。

 『本物』の信頼関係だと確信するには、それをはかる試金石が必要ですよね。

 それが今回の事件だとしたら、なんというか、不安しかありません。

 彼らは『本物』へたどり着けるのでしょうか。